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お疲れ様です!今日も訪問してくださり、ありがとうございます^^
社用車を使っている会社では、事故の連絡が総務に入ってくることがあります。
私の会社でも一度、社用車の事故が起きたことがあります。
社用車で事故が起きたと連絡がきて、頭が真っ白になりました。自分では運転しないので、なおさら何から手をつければいいのか分からなくて……。警察と保険会社、どちらに先に連絡すればいいのか、その場で判断できなくて……。
社用車の事故も、車の事故と一緒で、先に警察に連絡すれば大丈夫です。
物損だけの小さい事故でも、道路交通法で警察への届出が義務になっています。
保険会社への連絡は、そのあとで構いません。
私の会社でも、社員の送迎を担当していたベテラン社員が駐車場のフェンスに社用車のドアをぶつけてしまう物損事故が実際にあり、そのときも先に警察、次に保険会社という順番で対応しました。
保険は使いましたし、契約はフリート契約でした。
この記事では、警察と保険会社の連絡の順番から、フリート契約とノンフリート契約で保険を使うかどうかの判断がどう変わるのか、もらい事故だと示談代行が使えないこと、事故報告書と始末書は別物であることまでをまとめています。
あわせて、相手のいる人身事故になったときに労災と自賠責と保険の等級が同時に動く場面、当て逃げや自損事故での警察への届出、運転者への処分の考え方まで並べました。
物損事故の対応は実際にやった話として、人身事故や労災がからむ場面は公式の情報をもとにした解説として書いています。
ぜひ参考にしてくださいね!
- 社用車で事故が起きて、何から手をつければいいか分からない方
- 警察と保険会社、どちらに先に連絡すればいいか迷っている方
- 保険を使うかどうかの判断基準を知りたい方
- 中小企業でひとり(または少人数)で総務をしていて、車両まわりの対応も任されている方
【結論】社用車の事故が起きたら総務がやることの流れ
社用車の事故で総務がやることは、安全確認と警察への届出を最優先にして、そのあとに保険会社への連絡と社内の書類対応を進めることです。
社用車の事故対応でよく聞かれるのは、この8つです。
| よくある疑問 | 答え |
|---|---|
| 事故が起きたら最初に何をする? | 安全確認をしてから警察に届け出る。物損だけの事故でも道路交通法上の義務 |
| 警察と保険会社はどちらが先? | 先に警察、そのあとに保険会社という順番が基本 |
| 小さい事故でも保険は使うべき? | 契約がフリートかノンフリートかで判断の考え方が変わる。一律には言えない |
| もらい事故でも示談代行してもらえる? | 過失ゼロの場合は示談代行の対象外になる |
| 事故報告書と始末書は同じもの? | 別物。事故報告書は事実の記録、始末書は本人の報告と反省 |
| 相手や自分がケガをしたら? | 労災(業務災害または通勤災害)も動く。どちらかで会社の負担が変わる |
| 当て逃げや自損事故でも警察に届ける? | 相手がいなくても届出の義務は残る |
| 運転者を処分してもいい? | 就業規則に規定があれば可能。ただし減給には法律上の上限がある |
このあと、この順番のまま詳しく見ていきます。
事故が起きたら最初にやること
社用車で事故が起きたとき、運転していた本人が最初にやることは、けが人の救護と安全の確保です。
道路交通法72条1項では、交通事故があったときの運転者の義務が定められています。
①直ちに車両を止め、負傷者を救護する
②道路における危険を防止する措置をとる
③警察官が現場にいない場合、最寄りの警察署に事故の日時・場所・死傷者の数・負傷の程度・壊れた物と壊れ具合・講じた措置を報告する
この義務は、軽い物損事故でも適用されます。
相手のいない自損事故でも、駐車場でドアをこすっただけの事故でも、警察への報告は省略できません。
違反した場合の罰則は、事故の内容によって重さが分かれます。
人身事故で救護せずに立ち去った場合は、道路交通法117条により5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。自分の運転が原因で死傷させて立ち去った場合は、117条2項により10年以下の懲役または100万円以下の罰金に引き上がります。
一方、駐車場でドアをこすった程度の物損事故で、警察への報告だけを怠った場合は、119条1項10号により3か月以下の懲役または5万円以下の罰金です。
どちらにしても軽い罰則ではありませんが、ニュースになるような重い事故の罰則をそのまま軽微な物損事故に当てはめて考えないよう、区別して理解しておく必要があります。
「これくらいの傷なら警察を呼ばなくても」という判断は、運転者の個人的な感覚ではなく法律違反になり得る判断です。
総務としては、社用車を運転する社員全員に、この義務を事前に伝えておく必要があります。
①安全確認と警察への届出がいちばん先
安全確認と警察への届出は、事故の程度にかかわらず先にやることです。
物損か人身かで書類や手続きの中身は変わりますが、この順番自体は変わりません。
事故が起きたときの流れを、時系列で並べると次のようになります。
| 順番 | やること | 誰がやるか |
|---|---|---|
| ① | 負傷者の救護・危険防止の措置 | 運転者本人 |
| ② | 警察への連絡・届出 | 運転者本人 |
| ③ | 安全運転管理者への連絡 | 運転者本人 |
| ④ | 保険会社への連絡 | 運転者本人または総務 |
| ⑤ | 事故報告書の作成 | 総務(安全運転管理者と連携) |
①と②は法律上の義務なので、この順番を崩すことはできません。
③と④は会社の実務上の流れで、どちらを先にするかは会社によって違います。
事故が物損か人身かによって、このあとの書類や手続きの中身は変わってきますが、①から④までの初動の順番自体は共通しています。
けがの有無がその場でまだ分からない場合も、まずは①から④の順で対応を進めながら、あとから必要な書類を追加していく形で問題ありません。
②安全運転管理者と保険会社への連絡
安全確認と警察への届出がすんだら、次は社内の安全運転管理者への連絡です。
安全運転管理者というのは、一定台数以上の車を使う会社で選任が義務になっている担当者のことです。
事故が起きたことを早めに伝えておくと、そのあとの保険会社とのやり取りや、社内の記録づくりがスムーズになります。
安全運転管理者は、運転者の点呼や、運転前後のアルコールチェックの実施と記録の保存などを担っています。
事故の連絡と合わせて、社用車が何台からアルコールチェックの義務が生じるのかも含めて、一度確認しておくと安心です。

③実際にあった事故ではこの順番で対応した
私の会社では、社員の送迎をしていたベテラン社員が運転する社用車が、会社の駐車場のフェンスにぶつかってドアが凹む事故を起こしました。
相手のいない自損の物損事故です。
その社員は、警察に連絡してから保険会社に連絡しました。
私の会社では以前から、「保険会社に連絡するにしても、先に警察へ連絡してほしい」と伝えられていたからです。
さらに私の会社では、契約している保険会社から「事故が起きたらやることリスト」が書かれたカードをもらっていて、各社用車の運転席からすぐ見える場所に置いています。
連絡先の電話番号と、確認すべきことの順番が、そのカード1枚にまとまっています。
事故のときは気が動転して、日ごろ分かっているはずのことも思い出せなくなります。
連絡先や順番をその場で思い出せなくても、運転席からカードを見れば分かるようにしてあるので、慌てているときほど助かる仕組みになっています。
警察が現場に来て、この事故は物損事故として処理されました。
手順を決めてカードまで用意していても、実際に事故の連絡を受けたときはやっぱり焦りました。運転していた本人が落ち着いてカード通りに動いてくれて、決めておいて良かったと思いました。
この順番が適切な理由は、警察への届出が道路交通法上の義務であるのに対して、保険会社への連絡は契約に基づく連絡だからです。
義務のほうを後回しにする理由がありません。
さらに、警察に届け出ておくと、あとで交通事故証明書が発行されます。
交通事故証明書は保険金の請求でも必要になる書類なので、先に警察対応を終えておいたほうが、そのあとの保険会社とのやり取りも進めやすくなります。
事故現場で気が動転していると、つい保険会社にだけ電話して終わったつもりになりがちです。
社用車を運転する社員には、警察への連絡が先だということを、事故が起きる前に伝えておく必要があります。
車に手順のカードを置いておくかどうかは会社ごとの判断ですが、電話番号と順番を紙1枚にまとめて運転席から見える場所に置いておくだけなので、費用も手間もほとんどかかりません。
保険を使うかどうかはフリート契約かノンフリート契約かで変わる
社用車の保険を事故のあと使うかどうかは、契約がフリート契約かノンフリート契約かによって判断の考え方が変わります。
①ノンフリート契約は1台ごとの等級が動く
契約している車の台数が9台以下で、車1台ごとに契約する形になっているのがノンフリート契約です。
ノンフリート契約では、事故を起こすと契約している車のノンフリート等級が下がり、「事故有係数適用期間」と呼ばれる期間は保険料の割引率が低い状態が続きます。
事故有係数適用期間というのは、事故を起こしたあと、通常の等級よりも割引率が低い係数が適用される期間のことです。
3等級ダウンの事故なら、この期間は3年間です。
修理費が小さい事故の場合、この3年間の保険料の上昇分が、自己負担する修理費を上回ることがあります。
そのため、ノンフリート契約では、小さな事故はあえて保険を使わずに自己負担で直す、という判断をする場合があります。
②フリート契約は契約全体の損害率で決まる
契約している車の台数が10台以上で、契約者単位でまとめて契約する形になっているのがフリート契約です。
フリート契約には「フリート契約者料率」という仕組みが適用されます。
翌年以降の保険料は、1台ごとの等級ではなく、契約全体の「損害率」で決まります。
損害率というのは、支払った保険料に対して、保険会社が支払った保険金の割合のことです。
フリート契約は、事故の件数が少なくても、1件あたりの保険金が大きいと保険料が大幅に上がる可能性があります。
つまりフリート契約は、1台の等級で判断するのではなく、契約全体としてのコストで保険を使うかどうかを考える必要があります。
2つの契約を並べると、こうなります。
| ノンフリート契約 | フリート契約 | |
|---|---|---|
| 対象台数 | 9台以下 | 10台以上 |
| 契約の単位 | 車1台ごと | 契約者ごと(まとめて) |
| 保険料が決まる仕組み | 1台ごとのノンフリート等級 | 契約全体の損害率 |
| 事故1件の影響 | その車の等級が下がる | 契約全体の翌年の保険料に響く |
| 小さい事故の判断材料 | 事故有係数適用期間中の割引率低下と自己負担額の比較 | 契約全体の損害率と、1件あたりの保険金の大きさ |
③フリート契約で保険を使った実例
私の会社は社用車の台数が10台以上あるので、フリート契約です。
普通の車だけでなく、公道を走るフォークリフトも2台含めて、ちょうど10台になっています。
車の形をしていない乗り物でも、自動車保険をかけているものは台数に含まれることがあります。
自社の台数がフリートの基準に近い会社は、フォークリフトのような特殊車両も忘れずに数えたうえで、保険会社や代理店に確認してみてくださいね。
そのため、駐車場のフェンスにぶつけてドアが凹んだ事故でも、保険を使いました。
ドアが凹んだだけの、決して大きくはない損害ですが、ノンフリート契約なら「この程度なら自己負担にする」という判断もあり得る規模だと思います。
「小さい事故は保険を使わない」という話を聞いたことがあっても、それをそのまま自社に当てはめてよいとは限りません。
私の会社がフリート契約で保険を使ったのは、契約の形が違えば判断の基準も違うからです。
フリート契約であれば何も気にせず保険を使ってよい、という意味ではありません。
フリート契約でも、それまでの契約全体の損害率しだいでは、小さな事故は自己負担にしたほうがいいという判断がありうると考えられます。
自社の契約がフリートかノンフリートか、そして保険を使うとその後の保険料がどう動くのかは、保険証券を確認するか、契約している保険代理店や保険会社の担当者に確認するのが確実です。
私の会社の場合は、保険会社の担当者が事故のあとすぐに連絡をくれて、必要な書類なども含めて教えてくれました。
判断に迷う場面があっても、それに従って進めるだけで済んだので、担当者に確認しながら進める方法が総務にとってはいちばん負担が少ないと思います。
もらい事故で示談代行が使えないケースがある
相手の一方的な過失で起きた事故で、自分の側にはまったく過失がない事故のことを「もらい事故」と呼びます。
社用車がもらい事故に遭うと、総務が知らないと戸惑う仕組みがあります。
任意保険には「示談代行」というサービスがついていることが多く、事故の相手方との交渉を保険会社が契約者に代わって行ってくれます。
ところが、もらい事故のように自分の側に法律上の損害賠償責任がない場合は、この示談代行サービスの対象外になります。
示談代行が使えないケースは、これ以外にも次のようなものがあります。
①もらい事故など、被保険者に法律上の損害賠償責任がない場合
②相手の車が自賠責保険・共済に加入していない場合
③事故の相手の同意が得られない場合
④被保険者が保険会社への協力義務を果たさない場合
⑤被保険者が保険会社の示した解決条件に合意しない場合
社用車が追突されるようなもらい事故に遭うと、総務や運転者本人が、相手方や相手の保険会社と直接やり取りする場面が出てくることになります。
「保険に入っているから、あとは保険会社に任せておけば大丈夫」とは限らない、というのが、もらい事故のときに知っておきたいところです。
過失の割合について相手側と意見が食い違っている場合は、示談代行が使えるかどうかも含めて、早めに自社の保険会社に確認しておくと安心です。
社用車で外回りをしている社員が多い会社ほど、追突されるようなもらい事故に遭う確率も上がります。
示談代行が使えない前提で、いざというときに誰が相手方とやり取りするのかを、事前に決めておいたほうがいい理由がここにあります。
事故報告書と始末書は別物
社用車の事故が起きたあと、社内で作る書類には事故報告書と始末書があります。
この2つは、目的も書く人も違う別の書類です。
①事故報告書は事実を記録する書類
事故報告書に法律で決まった様式はなく、それぞれの会社が任意にフォーマットを作っています。
保険会社によっては、独自のフォーマットを用意している場合があるので、これから作る会社は一度聞いてみるといいかもしれません。
いつ、どこで、誰が運転していて、何が起きたのかという事実を記録するための書類です。
私の会社では、事故報告書を保険会社への提出書類も兼ねる形で作っています。
保険会社に提出する書類と社内用の書類を、あえて分けていません。
保険会社に出す書類をそのまま社内の記録にもできるので、同じ内容を2回書く手間が省けています。
事故報告書に決まった様式がないとはいえ、最低限そろえておきたい項目はだいたい共通しています。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 発生日時 | 事故が起きた日付と時刻 |
| 発生場所 | 住所や施設名など特定できる場所 |
| 運転者 | 運転していた社員の氏名 |
| 車両 | ナンバーや車両番号 |
| 事故の状況 | 何をしていて、どう事故が起きたか |
| 相手の有無 | 相手がいる事故か、自損か |
| けがの有無 | 本人・相手ともにけがの有無 |
| 損害の内容 | 車両・建物など壊れたものの内容 |
| 警察への届出 | 届け出た警察署・受理番号など |
| 保険会社への連絡 | 連絡日・担当者名 |
| その後の対応 | 修理・示談・治療などの経過 |
私の会社の事故報告書も、この項目に沿った内容を保険会社への提出書類として作り、そのまま社内の記録として残しています。
②始末書は本人が経緯と反省を書く書類
始末書(顛末書)は、事故を起こした本人が事故の経緯と反省を書く書類です。
私の会社では、駐車場のフェンスにぶつけてドアを凹ませた社員に、始末書を書いてもらいました。
事故報告書が事実の記録であるのに対して、始末書は本人からの報告と、社内への謝罪や再発防止の意思を示す書類だと考えています。
事故報告書には保険会社への提出も兼ねるという役目がある一方、始末書は社内だけで完結する書類です。
どちらか一方だけ用意すればいいというものではなく、両方を別に作っておくと、あとで見返したときの用途もはっきりします。
③事故報告書を作るときはいつ誰が運転していたかを確認する
事故報告書を作るときには、その車を事故の前後にいつ、誰が使っていたのかを確認する場面も出てきます。
運転日誌をつけている会社なら、そこを見ればすぐに分かります。
運転日誌の保存期間を短くしすぎていると、事故が起きたときに確認したくても、すでに廃棄済みということが起こります。
どのくらいの期間残しておけばいいのか、この機会に見ておくと安心です。

事故報告書と始末書は、どちらも作って終わりではなく、社内で一定期間保管しておく書類です。
保存期間について法律で決まった年数はないので、これも各社の判断になります。
私の会社では、運転日誌と同じように、社内で扱いを決めて保管しています。
事故の記録を長く残しておくと、似たような事故が繰り返し起きていないか、あとから振り返るときの材料にもなります。
相手や自分がケガをした場合は労災も動く
社用車の事故で相手や自分がケガをした場合は、保険会社とのやり取りに加えて、労災保険の手続きも視野に入ります。
労災保険が対象にするのは、大きく分けて業務災害と通勤災害の2つです。
①業務災害は事業主の管理下で起きた災害
業務災害は、事業主の支配・管理下にあり、業務が原因で起きた災害のことです。
社用車で外回りをしているときの事故は、業務災害として認められやすいとされています。
②通勤災害は逸脱と中断があると対象から外れる
通勤災害は、通勤の途中で起きた災害のことです。
通勤の経路から外れたり(逸脱)、通勤とは関係のない用事で寄り道をしたり(中断)すると、その後に起きた事故は原則として通勤災害の対象になりません。
日用品の買い物など、日常生活を送るうえで必要な最小限の外れ道であれば、その用事を終えて元の通勤経路に戻ったあとは、再び対象に戻ります。
業務災害と通勤災害の主な違いを並べると、次のようになります。
| 業務災害 | 通勤災害 | |
|---|---|---|
| 判断の基準 | 事業主の支配・管理下+業務起因性 | 通勤の経路上で起きたか |
| 逸脱・中断 | 該当しない | 逸脱・中断後は原則対象外(最小限の日常生活上の外れ道は復帰後に対象に戻る) |
| 休業(補償)給付 | 給付基礎日額の60%(休業4日目から) | 給付基礎日額の60%(休業4日目から) |
| 待期期間3日間の会社負担 | 法律上の休業補償義務あり(労基法76条) | 法律上の休業補償義務なし |
③休業した最初の3日間の扱いが業務災害と通勤災害で違う
業務災害と通勤災害を分けて考える必要があるのは、休業した最初の3日間の扱いが違うからです。
労災の休業(補償)給付は、給付基礎日額の60%が、休業4日目から支給されます。
これに特別支給金の20%が加わるので、実質的には8割程度の水準になります。
問題は、休業を始めてからの最初の3日間、いわゆる待期期間です。
業務災害の場合、労働基準法76条により、事業主には平均賃金の60%を休業補償として支払う法的な義務があります。
通勤災害の場合は、労働基準法76条の対象外になるため、待期期間の3日間について、事業主に法律上の休業補償の義務はありません。
就業規則で独自に補償を定めている会社もありますが、法律上の義務があるかどうかは、業務災害か通勤災害かで変わります。
社用車での事故なら業務災害だと思い込んでいたんですが、外回りの途中でも状況によって通勤災害になることがあると知って、どちらに当たるのか判断できる自信がなくなりました。
業務災害か通勤災害かの判断は、事故が起きた状況を細かく確認する必要があるので、迷ったときは労働基準監督署や顧問の社会保険労務士に相談するのが確実です。
自己判断で「これは業務災害のはず」と決めつけてしまうと、あとから休業補償の扱いが変わることもあります。
労災と自賠責と保険の等級を同時に動かす場面
相手のいる人身事故で、自社の運転者もケガをした場合は、労災保険と自賠責保険、そして自社の任意保険の等級という3つが同時に動くことになります。
①物損事故から人身事故への切り替え
当初は物損事故として警察に届け出ていても、あとからけがが分かった場合は、人身事故に切り替えることができます。
目安は事故から10日以内で、警察署に医師の診断書を提出する形になります。
物損のまま放置してしまうと、あとで人身事故として労災や自賠責の手続きを進めたいときに、警察側の記録が物損のままになってしまいます。
けがに気づいた時点で、早めに警察署へ相談しておく必要があります。
②労災保険と自賠責保険はどちらを先に使ってもいい
人身事故になったあとは、労災保険と自賠責保険のどちらを先に使うかという選択が出てきます。
自賠責保険などから先に受け取った場合は、同じ理由でもらえる分が、あとから労災保険の給付から差し引かれます。
労災保険を先に受けるか、自賠責保険などを先に受けるかは、被災した本人が選ぶことができます。
そして労働基準監督署は、労災保険の給付をおこなった場合、被災者が加害者に対して持っている損害賠償請求権を引き継いで、加害者側に請求します。
③第三者行為災害届が必要になる
相手のいる事故で労災保険を請求するときに必要になるのが「第三者行為災害届」です。
所轄の労働基準監督署に提出する書類で、届その1から3と、留意事項が書かれた届その4を合わせた、4枚1組になっています。
労災保険の給付を請求するより前か、同時に提出します。
添付する書類は次のとおりです。
①念書(兼同意書)
②自動車安全運転センターが発行する交通事故証明書
③示談が成立している場合は示談書の謄本
④自賠責保険などから仮渡金や賠償金を受け取っている場合はその支払証明書
正当な理由なくこの届出を提出しないと、労災保険の給付が一時的に差し止められることがあります。
様式は、所轄の労働基準監督署か厚生労働省のホームページで入手できます。
④自社の保険の等級にも同時に影響する
ここまでの労災・自賠責の手続きと並行して、自社の任意保険のほうも動いています。
相手のいる人身事故で保険を使えば、契約の等級や、フリート契約なら契約全体の損害率にも影響します。
保険をどう使うかの判断基準は、この記事の前半で説明したフリート契約とノンフリート契約の違いがそのまま関わってきます。
労災・自賠責・任意保険の3つを同時に進めるのは、総務にとって初めての経験になることが多い場面です。
労災保険の請求そのものは、本来はけがをした社員本人が行う手続きです。
とはいえ、様式の入手や記入、労働基準監督署とのやり取りを社員1人にすべて任せるのは現実的ではないので、実務では総務が手続きを手伝う形になることが多いです。
どこから手をつければいいか分からなくなったときは、労働基準監督署、自社の保険会社の担当者、顧問の社会保険労務士のそれぞれに、抱えている手続きを整理して伝えるところから始めるとよいと思います。
3つの手続きがどこに向かっているのかを整理すると、次のようになります。
| 手続き | 提出先 | 目的 |
|---|---|---|
| 労災保険の請求 | 労働基準監督署 | 治療費・休業補償など被災者への給付 |
| 第三者行為災害届 | 労働基準監督署 | 加害者がいることを労基署に届け、求償を可能にする |
| 自賠責保険の請求 | 相手の自賠責保険(または自社) | 人身損害の賠償 |
| 任意保険の事故連絡 | 自社の保険会社 | 車両の修理・示談交渉・等級への反映 |
同時に走っている手続きが4つあると分かっているだけでも、どこまで進んだかを社内で共有しやすくなります。
当て逃げや自損事故でも警察への届出は必要
相手が分からないまま逃げられてしまう当て逃げや、相手のいない自損事故でも、警察への届出は必要です。
道路交通法72条1項の義務は、相手がいる事故に限った話ではありません。
自分の車だけがぶつかった自損事故でも、相手が特定できない当て逃げでも、事故を起こした運転者に届出の義務があります。
「相手がいないから今回はいいか」という判断はできません。
当て逃げに遭った場合、車両保険を使えるかどうかは、加入している保険の商品によって変わります。
商品によっては、相手が分からない事故を補償の対象外にしているタイプ(エコノミー型など)もあります。
一律に「当て逃げなら車両保険が使える」とは言えないので、契約している保険会社や代理店に、自社の契約内容を確認する必要があります。
自損事故については、この記事の前半で紹介した駐車場のフェンスにぶつけた事故がそのまま当てはまります。
相手のいない物損事故でも、警察が来て事故として処理されました。
保険を使うかどうかの判断も、相手のいる事故と同じように、フリート契約かノンフリート契約かで考え方が変わります。
運転者への処分と減給の上限
社用車で事故を起こした運転者を処分するかどうかは、会社の就業規則に基づいて判断することになります。
懲戒処分には、戒告・けん責・減給・出勤停止・諭旨解雇・懲戒解雇など、いくつかの種類があります。
どの処分が使えるかは、会社の就業規則にどう定められているかによって決まります。
このうち減給については、処分の重さにかかわらず、労働基準法91条による上限があります。
①1回の減給額が、平均賃金1日分の半額を超えないこと
②一つの賃金支払期における減給の総額が、賃金総額の10分の1を超えないこと
そもそも減給という処分をおこなうには、就業規則にその根拠となる規定があることが前提になります。
規定がないまま給与を減らしてしまうと、それ自体が別の問題になります。
処分の重さが妥当かどうかは、業種、飲酒運転があったかどうか、事故の態様、過失の程度、物損か人身かの違い、それまでの安全教育の実施状況など、いくつもの事情を合わせて考えることになります。
どんな事故なら始末書で済み、どんな事故なら減給になるのかを、一律の目安として決められるものではありません。
私の会社では、駐車場のフェンスにぶつけてドアを凹ませた社員に始末書を書いてもらいましたが、金銭的な処分はしていません。
これは私の会社が今回の事故についてそう判断したというだけの実例で、どの会社でも始末書だけで済むという標準を示すものではありません。
始末書を書いてもらうことになったとき、正直どこまで書かせればいいのか分からず戸惑いました。結局、事故の状況と本人の言葉での説明、それだけを書いてもらう形にしました。
処分の重さに迷う場合は、就業規則の規定を確認したうえで、顧問の社会保険労務士に相談しておくと、あとになって「重すぎた」「軽すぎた」ともめることを避けやすくなります。
社用車の事故再発防止でやること
社用車の事故の再発防止として、総務がやるべきことは書類の対応だけではありません。
同じ事故を繰り返さないための、社内への働きかけも欠かせません。
事故を起こした本人への聞き取りと指導は、再発防止の中心になります。
事故が起きた状況を確認し、同じような場面で何を注意すればいいのかを、本人と一緒に振り返ります。
社用車を運転する社員全員に、事故の内容を共有することも有効です。
個人が特定されない範囲で、どんな状況で事故が起きたのかを伝えておくと、同じような場面に遭遇したときの注意につながります。
日ごろの記録を点検することも、再発防止の一環になります。
運転日誌やアルコールチェックの記録を定期的に見直しておくと、特定の車両や特定の時間帯に事故やヒヤリハットが集中していないかに気づきやすくなります。
事故が起きたときの対応を安全運転管理者の法定業務として明記した条文は見当たりませんでした。
それでも、日ごろの指導や記録の点検、事故のあとの振り返りは、安全運転管理者の業務として実務上ごく自然におこなわれています。
保険会社からもらった事故対応のカードを車内に置いているのも、この再発防止の一部です。
事故が起きてから手順を説明するのではなく、事故が起きる前から誰でも同じ手順を踏めるようにしておくことが、いちばん効果のある備えだと感じています。
再発防止の取り組みに正解の形はなく、社用車の台数や業務内容に合わせて、できるところから続けていくしかないというのが実感です。
よくある質問
物損事故を警察に届けないとどうなりますか?
物損事故でも警察への届出は道路交通法上の義務なので、届けずに済ませることはできません。
物損事故で報告義務だけに違反した場合は、道路交通法119条1項10号により3か月以下の懲役または5万円以下の罰金です(人身事故で救護せずに立ち去った場合の117条・5年以下の懲役とは罰則が別になります)。
軽い傷だからと自己判断で省略すると、あとから保険金の請求で必要な交通事故証明書も発行してもらえなくなります。
自社の契約がフリートかノンフリートかはどこで確認できますか?
保険証券に契約台数や契約の種類が記載されています。
自分で判断がつかない場合は、契約している保険代理店や保険会社の担当者に確認するのがいちばん確実です。
始末書を書かせるかどうかは誰が決めますか?
就業規則に懲戒や指導に関する規定があれば、その規定に沿って会社が判断します。
私の会社では、事故を起こした社員本人に始末書を書いてもらいましたが、これは私の会社の対応であって、どの事故でも始末書が必要という決まりではありません。
通勤中の事故で休業した最初の3日間の給料はどうなりますか?
通勤災害の場合、労働基準法76条の対象外になるため、休業した最初の3日間について、事業主に法律上の休業補償の義務はありません。
業務災害の場合は、同じ3日間について事業主に平均賃金の60%を支払う法的な義務があります。
就業規則で独自に補償を定めている会社もあるので、まずは自社の規則を確認してください。
当て逃げされた場合に車両保険は使えますか?
加入している保険の商品によって、相手が分からない事故を補償の対象外にしているタイプもあります。
自社の契約内容を、保険会社や代理店に確認してください。
事故対応の手順を社内で共有するにはどうすればいいですか?
保険会社によっては、事故が起きたときの連絡先や手順をまとめたカードを用意しています。
私の会社では、そのカードを各社用車の運転席から見える場所に置いています。
事故のときは気が動転するので、紙に書いて車内に置いておくだけでも、慌てずに手順を踏めるようになります。
自社の保険会社にカードのようなものがあるか、一度確認してみるといいと思います。
事故報告書や始末書はどのくらい保管しておけばいいですか?
法律で決まった保存期間はなく、各社の判断になります。
私の会社では、運転日誌と同じ考え方で社内の保管年数を決めています。
事故が続けて起きたときに見比べられるように、一定期間は残しておくことをおすすめします。
まとめ
社用車の事故対応について、押さえておきたいところをまとめます。
①事故が起きたら安全確認をしてから警察に届け出る。物損事故でも義務
②警察への連絡が先。保険会社への連絡はそのあとでよい
③事故対応の手順を書いたカードを車内に置いておくと、気が動転していても迷わない
④保険を使うかどうかは、フリート契約かノンフリート契約かで判断の考え方が変わる
⑤もらい事故は示談代行の対象外になる
⑥事故報告書と始末書は別物。事故報告書は事実の記録、始末書は本人の報告
⑦相手や自分がケガをしたら労災も動く。業務災害と通勤災害で休業最初3日間の会社負担が違う
⑧相手のいる人身事故では労災・自賠責・自社の保険の3つが同時に動く
⑨当て逃げや自損事故でも警察への届出は必要
⑩運転者への減給には労働基準法91条の上限がある
事故の対応そのものは、保険会社の担当者に確認しながら進めるところが多く、総務がすべてを1人で判断しなければいけないわけではありません。
ただ、警察への届出の義務や、フリート契約とノンフリート契約で保険の使い方が変わること、労災と自賠責と保険の等級が同時に動く場面があることは、事故が起きる前に総務のほうで知っておいたほうがいい内容です。
事故は、起きてからでは落ち着いて調べている余裕がありません。
車に手順のカードを置いておくような小さな備えが、いちばん効いてくるのはそういうときだと思います。
ぜひ、参考にしてみてください!

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