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社長から「来月あの事務所を引き払う」と言われました。登記が要ることは分かるんですが、定款まで変えないといけないのか、法務局が変わると費用がどうなるのか、登記のあとどこに何を出すのか…。調べても司法書士事務所のページばかりで、総務が何をどの順番でやればいいのかが分からないんです。
会社の登記は司法書士に頼むもの。
総務になるまで、私もずっとそう思っていました。
うちの会社も登記事務所に委託していて、役員変更だけで毎回7万円以上かかっていました。
それを「自分でできないのかな」と調べ始めたのがきっかけで、今は役員変更の登記を毎年自分で出しています。
費用は、司法書士にお願いしていたころの5分の1以下になりました。
その経験から言えるのは、登記は慣れれば司法書士に頼まなくても大丈夫だということです。
ただ、本店移転となると、役員変更とは少し勝手が違います。
移転先の住所によって登録免許税が倍になったり、株主総会が必要になったり不要になったり。
同じ本店移転でも、条件で手続きが分かれてしまうんです。
私が本店移転を経験したのは、派遣社員として働いていたころでした。
登記の担当ではありませんでしたが、住所がひとつ変わるだけで社内がどれだけバタバタするかは、そのときに見ています。
そして今あらためて調べ直してみると、本当に大変なのは登記そのものではなく、そのあとに続く届出のほうでした。
年金事務所は5日以内、労働基準監督署とハローワークは10日以内。
登記が終わってからのほうが、むしろ期限が短いんです。
- 会社が引っ越すことになり本店移転の登記を任された総務担当者さん
- 司法書士に頼まず自分で登記をやって費用を抑えたい方
- 定款変更や株主総会が必要なのかどうかを確かめたい方
- 登記のあとにどこへ何を出すのか期限つきで知りたい方
- 中小企業でひとり総務をしていて相談できる相手がいない方
本店移転の登記の期限は2週間!総務が最初におさえること
本店移転が決まったら、真っ先に押さえるのは期限です。
ここを外すと、あとの段取りが全部ずれます。
本店移転の登記の期限は移転した日から2週間以内
会社法915条1項に、変更の登記は2週間以内にしなければならないと書かれています。
会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
起算日は「実際に本店を移した日」です。
取締役会や取締役の決定で「令和○年○月○日に移転する」と決めた、その日になります。
ここで見落としやすいのが、申請を先回りして出すことはできない、という点です。
法務局の記載例には「本店移転の日より前に、本店移転の登記の申請をすることはできません」とはっきり書かれています。
つまり、引っ越しが決まっていても、移転日が来るまでは出せません。
申請できるのは、移転日から2週間のあいだだけです。
引っ越し当日は荷物と回線とレイアウトでバタバタする時期なので、書類は移転日より前に作り終えておいて、移転日を待って出すのが現実的です。
本店移転の登記を忘れると100万円以下の過料になる
2週間を過ぎたらどうなるのか、というと、会社法976条1号に「この法律の規定による登記をすることを怠ったとき」は100万円以下の過料と定められています。
過料を払うのは会社ではなく、代表取締役など個人です。
総務としては「社長のポケットから出る話」だと分かっていると、社内で日程を押さえるときの説得力が変わります。
過料がどのくらいの金額で、どんなときに通知が来るのかは、役員変更のケースで別記事にまとめています。

本店移転の登記費用はいくら?登録免許税が3万円と6万円に分かれる理由
本店移転の登記費用でいちばん大きいのが登録免許税です。
そして、この金額が移転先によって倍になります。
同じ法務局の管轄内に移転するなら登録免許税は3万円
登録免許税法の別表第一には、本店の移転の登記は「一箇所につき三万円」と書かれています。
同じ法務局の管轄のなかで引っ越すなら、申請するのは1か所だけなので3万円です。
管轄外に移転すると本店移転の登記費用は6万円になる
別の法務局の管轄に移る場合は、旧本店の管轄と新本店の管轄、両方に申請書を出します。
1か所につき3万円なので、合計6万円です。
ここで大事なのが、2通を別々に持っていくわけではないという点です。
法務局の記載例には、旧本店あての申請書と新本店あての申請書を「同時に、変更前の本店所在地の登記所に提出してください」と書かれています。
新しい住所を管轄する法務局に自分で出向く必要はなく、旧本店の法務局が経由して回してくれます。
| 移転のパターン | 申請する件数 | 提出先 | 登録免許税 |
|---|---|---|---|
| 同じ法務局の管轄内で移転 | 1件 | その法務局 | 3万円 |
| 別の法務局の管轄に移転 | 2件(旧本店あて+新本店あて) | 2件とも旧本店の法務局に同時提出 | 合計6万円 |
自分の会社の移転先がどちらに当たるかは、法務局のサイトで管轄一覧を見れば分かります。
意外なのが、同じ市内でも管轄が分かれることがある点です。
移転先の住所が決まった時点で、まず管轄一覧を開いて確認しておくと、あとで予算を出し直さずにすみます。
司法書士に頼んだ場合の本店移転の登記費用の目安
司法書士に依頼すると、この登録免許税に報酬が上乗せされます。
私の会社が以前もらった見積もりは、役員変更だけで約7万円でした。
本店移転は登録免許税そのものが3万円か6万円なので、報酬を足すと総額はさらに膨らみます。
私が自分で登記をやろうと思ったきっかけも、この報酬の部分でした。役員変更だけで7万円と聞いて「これが毎年…?」と、見積書を二度見しました(笑)。登録免許税は誰がやっても同じ金額なので、削れるのは報酬だけなんですよね。
【移転前】本店移転で定款変更が必要になるケースと株主総会の要否
本店移転でいちばん迷うのが、株主総会を開かないといけないのかどうかです。
ここは自社の定款を開けば答えが出ます。
まず定款の「本店」の条文をどう書いているか確認する
定款には、本店の場所を書いた条文が必ずあります。
多くの会社は「当会社は、本店を大阪府大阪市に置く」のように、市区町村までしか書いていません。
この市区町村までの単位を、法律の言葉で最小行政区画といいます。
一方で「本店を大阪府大阪市○○区○○町1丁目2番3号に置く」と、番地まで書いてある定款もあります。
どちらの書き方かで、必要な手続きが変わります。
定款を変えなくていいなら取締役会や取締役の決定だけで足りる
法務局の記載例にも、定款で本店を市区町村までしか定めていない場合、その市区町村のなかでの移転なら株主総会の決議も議事録の添付も要らないと書かれています。
定款が「大阪市」までしか書いていなくて、移転先も大阪市内なら、定款はそのままでいいということです。
このときは、取締役会設置会社なら取締役会議事録、取締役会を置いていない会社なら取締役の過半数の一致を証する書面(取締役決定書)を作ります。
定款を変える場合は株主総会の特別決議が必要になる
移転先が定款に書いた市区町村の外なら、定款そのものを直す必要があります。
定款の変更は株主総会の特別決議なので、臨時株主総会を開いて議事録を残します。
番地まで書いてある定款の場合は、同じ市内で数百メートル動くだけでも定款変更になります。
この場合も、移転先の住所そのものは取締役会や取締役の決定で決めるので、株主総会議事録と取締役会議事録の両方が要ります。
| 定款の本店の書き方 | 移転先 | 株主総会(定款変更) | 取締役会または取締役の決定 |
|---|---|---|---|
| 市区町村まで(例:大阪市) | 同じ市区町村内 | 不要 | 必要 |
| 市区町村まで(例:大阪市) | 別の市区町村 | 必要(特別決議) | 必要 |
| 番地まで(例:○○町1-2-3) | どこへ移転しても | 必要(特別決議) | 必要 |
この表でもうひとつ知っておきたいのが、定款変更の要否と法務局の管轄は別の話だということです。
同じ市内なので定款変更は要らないけれど、管轄する法務局は変わるので登録免許税は6万円、という組み合わせもあります。
逆に、定款は変えるのに管轄は同じで3万円のまま、ということもあります。
「定款を変えるかどうか」と「管轄が変わるかどうか」は、それぞれ別々に確認しておくと混乱しません。
定款って普段まったく開かないので、どこにしまってあるかから探すことになりそうです…。
定款の原本が見つからないという話は、中小企業だと本当によく聞きます。
設立を頼んだ税理士や司法書士、あるいは公証役場に控えが残っていることが多いので、まずはそこに聞いてみるのが早いです。
定款を開いたら、本店の条文が「大阪市に置く」で終わっているか、「大阪市〇〇区〇〇一丁目2番3号に置く」まで書いてあるかだけを見ます。
ここが分かれ目なので、移転先の住所と見比べれば、株主総会が必要かどうかはその場で判断できます。
本店移転の登記の必要書類!管轄内と管轄外で分けたチェックリスト
必要書類は、法務局が公開している記載例のPDFにそのまま書かれています。
パターン別に並べます。
管轄内に移転する場合の本店移転登記の必要書類
①株式会社本店移転登記申請書
②取締役会議事録(取締役会を置いていない会社は取締役決定書)
③株主総会議事録(定款を変更する場合のみ)
④株主リスト(③を添付する場合のみ)
⑤収入印紙貼付台紙と収入印紙3万円分
⑥委任状(代理人に申請を任せる場合のみ)
④の株主リストは、正式には「株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面」という長い名前の書類です。
議決権の多い株主から順に、割合が3分の2に達するまで。
または、上位10名まで。
このどちらか少ないほうの人数を書いて、代表者名で証明します。
株主総会を開かないパターンなら、そもそも株主リスト自体が要りません。
管轄外に移転する場合の本店移転登記の必要書類は申請書が2通
管轄が変わる場合は、申請書を2通作ります。
そして、添付する書類の重さがまったく違います。
| ①旧本店の法務局あて | ②新本店の法務局あて | |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 3万円 | 3万円 |
| 株主総会議事録 | 定款変更をする場合は必要 | 不要 |
| 株主リスト | 上記に合わせて必要 | 不要 |
| 取締役会議事録 (または取締役決定書) | 必要 | 不要 |
| 委任状 | 代理人に任せる場合のみ | 代理人に任せる場合のみ |
| 出す場所 | ①②をまとめて、旧本店の法務局に同時提出 | |
新本店あての申請書は、代理人を立てないなら添付書類がありません。
実質的に作り込むのは旧本店あての1通で、2通目は申請書と収入印紙だけ、というイメージです。
印鑑届書は2025年4月から不要になった
少し前まで、管轄外に本店移転するときは新しい法務局に印鑑届書を出す必要がありました。
この扱いが、令和7年4月21日施行の商業登記規則の改正で変わっています。
旧所在地の法務局が印鑑の記録を新しい法務局に送ってくれるので、印鑑届書の提出は不要になりました。
ただし、印鑑カードは引き継がれません。
印鑑証明書が必要になる会社は、登記が終わったあとに新しい法務局へ印鑑カードを請求し直すことになります。
このあとで触れる年金事務所や銀行の手続きで印鑑証明書を求められることがあるので、印鑑カードの再請求は登記完了後すぐに動いておくと、あとの手続きがつかえません。
古い解説記事だと「印鑑届書も忘れずに」と書かれていることがあります。
登記まわりは細かいルールがちょこちょこ変わるので、書類の一覧は必ず法務局のページで最新版を見るようにしましょう!
【移転後2週間以内】本店移転の登記を自分でやる手順4ステップ
ここからが実際の作業です。
私が役員変更でやっている流れと、本店移転の記載例を突き合わせて並べています。
①法務局のひな形をダウンロードして書類を作る
法務局の「商業・法人登記の申請書様式」のページに、本店移転の申請書がWordとPDFで置かれています。
「株式会社(本店移転(管轄登記所内で移転する場合))」と「株式会社(本店移転(管轄登記所外に移転する場合))」で別ファイルになっているので、自社に当てはまるほうを落とします。
ありがたいのは、このファイルに株主総会議事録・取締役会議事録・取締役決定書・株主リスト・委任状の記載例まで全部入っていることです。
ゼロから議事録の文面を考える必要はなく、日付と住所と名前を自社のものに差し替えていけば形になります。
②登記すべき事項の書き方を管轄内と管轄外で間違えない
申請書のなかで、いちばん間違えやすいのが「登記すべき事項」の欄です。
管轄内と管轄外で、書き方がまったく違います。
【管轄内で移転するとき】
「本店」○県○市○町○丁目○番○号
「原因年月日」令和○年○月○日移転
【管轄外に移転するとき・旧本店の法務局あて】
「登記記録に関する事項」令和○年○月○日○県○市○町○丁目○番○号に本店移転
【管轄外に移転するとき・新本店の法務局あて】
「登記記録に関する事項」令和○年○月○日○県○市○町○丁目○番○号から本店移転
管轄外の2通は、「に本店移転」と「から本店移転」で助詞がひっくり返ります。
書く住所も、旧本店あては新しい住所、新本店あては古い住所です。
コピーして使い回すと確実に取り違えるので、ここだけは2通を並べて声に出して読んで確認しています。
③収入印紙を貼って法務局に出す(窓口・郵送・オンライン)
書類がそろったら、収入印紙貼付台紙に収入印紙を貼ります。
法務局の記載例には、収入印紙には割印をしないこと、消印作業の都合で右側に寄せて貼ることと書かれています。
申請書が複数ページになるときは、つづり目に契印が要ります。
契印に使うのは、申請書に押したのと同じ印鑑(法務局に届け出ている会社の実印か、代理人の印鑑)です。
提出方法は、窓口に持参・郵送・オンラインの3つです。
オンライン申請は代表取締役のマイナンバーカードとICカードリーダーが必要で、専用の申請用総合ソフトを入れるところから始まります。
管轄外の場合は、新本店あての申請で「経由の有無」を「有」にして、申請先に旧本店の法務局を指定します。
私が毎回いちばん悩むのが、この契印と割印の位置です。年に1回しかやらない作業なので「どの印鑑でどこに押すんだっけ」と毎回ネットで調べ直しています(笑)。初回は他の仕事と並行しながらで3日かかりました。
④登記完了を確認して登記事項証明書を多めに取る
提出したその日に登記が終わるわけではありません。
法務局は管轄ごとに「登記完了予定日」を公表していて、申請日ごとにいつ終わるかが分かるようになっています。
書面で出すと、オンライン申請より3〜4日ほど余計にかかることがあると案内されています。
さらに管轄外への本店移転は、完了が予定日の翌日以降になる場合の例として挙げられています。
1週間から2週間はみておいて、スケジュールを組むのが安全です。
登記が終わったら、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を取ります。
ここでケチらずに、多めに取っておくのがおすすめです。
このあとの届出で、年金事務所・銀行・取引先と、あちこちで登記事項証明書のコピーや原本を求められるからです。
1通ずつ取りに行くと法務局への往復が増えるので、必要になりそうな数を数えてまとめて取ってしまうほうが早く終わります。
私の会社は派遣業と古物商の許可を持っているので、登記事項証明書はいつも2通取っています。
許認可の変更届に原本を添えることになるので、1通だと足りなくなるからです。
ここまで読んで「思ったより工程が多い」と感じた方もいると思います。
正直に言うと、私も毎回そう思っています。
年に1回あるかないかの作業なので、どうしても毎回ゼロから調べ直しになるんですよね。
私は5回目の申請でも書類に不備があって、提出後に法務局から修正の電話が来たことがあります。
期限が2週間と決まっている本店移転で、この差し戻しが起きるのはかなり痛いです。
費用は抑えたいけれど書類の不備が怖い、という場合は、登記書類を自動で作ってくれるサービスを使う手もあります。
私が役員変更のときに調べて知ったのがGVA法人登記で、変更内容を入力するだけで申請書と議事録が一式そろいます。
本店移転にも対応していて、料金は書類作成費用として設定されています(登録免許税は別途)。
郵送でも窓口でも提出できるので、平日に法務局まで行けない総務でも回せます。
登記を自分でやるとき、いちばん時間を取られるのが書類作りです。
これまでは「司法書士に高いお金を払う」か「全部自分で調べてやる」かの二択でしたが、書類作りだけ任せるという選び方もあります。
GVA 法人登記は、必要な情報を入力するだけで登記の申請書類ができあがるオンラインサービスです。
- 最短7分で自動作成:入力するだけで申請書類ができる
- 5,000円(税別)から:専門家に依頼するよりかなり安い
- 司法書士監修:内容の正確さも押さえられている
- 登記情報を自動で反映:入力ミスが減って作成時間も短くなる
※料金やサービス内容は変わることがあるので、最新の情報は公式サイトで確認してください。
役員変更など本店移転以外の登記も自分でやってみたい方は、こちらに手順をまとめています。

本店移転の登記のあとに総務がやる届出一覧!期限が短い順
登記が終わってからが、総務の本番です。
役所ごとに期限がバラバラで、しかも短いものは5日しかありません。
先に全体を一覧にします。
| 届出先 | 書類名 | 期限 |
|---|---|---|
| 年金事務所 | 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 | 事実発生から5日以内 |
| 労働基準監督署 | 労働保険 名称、所在地等変更届 | 変更のあった日の翌日から10日以内 |
| ハローワーク | 雇用保険事業主事業所各種変更届 | 変更のあった日の翌日から10日以内 |
| 税務署 | 異動届出書 | 異動等後速やかに |
| 都道府県税事務所 | 法人異動事項申告書など(名称は自治体による) | 遅滞なく |
| 市区町村 | 法人異動届など(名称は自治体による) | 自治体ごとに確認 |
| 郵便局 | 転居届(e転居も可) | 期限なし(移転前に) |
| 銀行・取引先 | 各社の様式 | 期限なし(早めに) |
5日以内:年金事務所への社会保険の届出
いちばん期限が短いのが社会保険です。
日本年金機構のサイトには、適用事業所名称/所在地変更(訂正)届の提出期限は事実発生から5日以内と書かれています。
管轄内でも管轄外でも5日以内で、提出先はどちらも変更前の事業所を管轄する年金事務所(または事務センター)です。
添付書類として法人の登記簿謄本のコピーが要るのですが、ここに落とし穴があります。
提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものでなければいけません。
登記が完了しないと新しい住所の登記簿は取れないので、実務としては「登記完了→登記事項証明書を取る→5日以内に年金事務所」という流れになります。
10日以内:労働基準監督署とハローワークへの労働保険の届出
次に来るのが労働保険と雇用保険です。
どちらも変更のあった日の翌日から起算して10日以内で、提出先は移転後の所在地を管轄する役所になります。
労働基準監督署に「労働保険 名称、所在地等変更届」、ハローワークに「雇用保険事業主事業所各種変更届」です。
ここで順番が決まっています。
ハローワークに出すときは、労働基準監督署に出した変更届の事業主控えを添付するので、先に労働基準監督署です。
この順番を逆にすると1往復増えるので、10日という期限のなかではけっこう効いてきます。
うちの会社は顧問の社労士さんと契約しているので、社会保険と労働保険の申請そのものは社労士さんにお願いする分野です。それでも「いつまでに何が要るか」を総務が把握していないと、登記事項証明書の手配が間に合いません。丸投げにせず期限だけは自分のスケジュールに入れています。
速やかに:税務署への異動届出書
税務署には異動届出書を出します。
国税庁のページでは、提出時期は「異動等後速やかに」、提出先は「異動前の納税地の所轄税務署長」となっています。
引っ越し先の税務署ではなく、引っ越し前の税務署に出すという点だけ間違えないようにします。
添付書類は「なし」と書かれていますが、内容確認のため定款等の写しを求められる場合があるとも書かれているので、手元に置いてから行くのが無難です。
遅滞なく:都道府県税事務所と市区町村への届出
地方税のほうは、都道府県と市区町村の2か所です。
書類の名前が自治体ごとに違うので、ここは自分の自治体のページを見る必要があります。
私の住んでいる大阪府の場合は「法人異動事項申告書」という名前で、異動があったら遅滞なく申告してくださいと案内されています。
登記事項の変更をともなうときは、登記事項証明書の写しの添付が必要です。
eLTAXを使えば税務署・都道府県・市区町村の届出をまとめて電子申請できるので、複数の自治体にまたがる移転なら検討する価値があります。
期限はないけれど早めに:郵便物の転送と銀行と取引先
役所以外にも、総務が回るところがあります。
まず郵便物の転送です。
日本郵便の転居・転送サービスは会社や団体でも使えて、届出日から1年間、旧住所あての郵便物が新住所に転送されます。
e転居ならオンラインで手続きできて、申し込み完了から3〜7営業日で転送が始まります。
逆に言うと、移転当日に申し込んでも間に合わないということです。
引っ越しの1週間前くらいに出しておくと、請求書や納税通知が旧住所で止まる事故を防げます。
銀行は、口座を持っている金融機関ごとに住所変更の届出が要ります。
登記事項証明書と印鑑証明書を求められることが多いので、ここでも登記完了後の書類集めが効いてきます。
取引先への案内は、移転日の1か月前くらいに出すのが一般的です。
請求書の送付先や納品先が変わるので、経理と営業の両方に確認してからリストを作ると漏れが減ります。
私が移転を経験したときも、社内に案内文のひな形はありませんでした。
ネットで文例をいくつか見て、自分の会社の言い回しに直しながら作った記憶があります。
関連会社にも、それぞれの取引先へ案内を出してもらうようお願いしました。
届出がいらないもの:法人番号公表サイトは自動で変わる
逆に、何もしなくていいものもあります。
国税庁の法人番号公表サイトに載っている本店所在地は、法務省から国税庁に登記情報が自動で通知されて更新されます。
商号や本店所在地が変わっても、法人番号について税務署に何かを出す必要はありません。
公表されるタイミングは、登記完了日の午後4時か、翌開庁日の午前11時ごろとされています。
本店移転の登記でつまずきやすいポイント3つ
最後に、日程を組むときに引っかかりやすいところを3つ挙げておきます。
①移転日より前に登記申請はできない
書類ができていても、移転日が来るまでは提出できません。
議事録の日付と移転日と申請日の3つがそろっているか、提出前にもう一度見直します。
②管轄外の移転は登記完了までに時間がかかる
旧本店の法務局から新本店の法務局へ書類が回るので、その分だけ完了が後ろにずれます。
年金事務所の5日という期限は登記完了を待ってから動くことになるので、移転日から逆算して余裕をもたせておきます。
③許認可を受けている会社は別の変更届も必要
建設業や派遣業、古物商など、許認可を受けている会社は所管の役所にも変更届が要ります。
許認可ごとに期限が決まっていることが多いので、許可証を引っぱり出して所管先と期限を確認しておきます。
私の会社は派遣業と古物商の許可を持っているので、本店が変わればこの2つも届出が必要になります。
古物商は、変更があった日から14日以内に、営業所の所轄警察署を経由して変更届出書を出します。
登記事項証明書を添付する場合だけ、20日以内と少し猶予があります。
派遣業のほうは労働局への変更届で、こちらは届け出る内容によって期限が10日以内と30日以内に分かれます。
登記事項証明書を添える届出は30日以内とされていますが、区分が細かいので、出す前に管轄の労働局で確認するのが確実です。
許認可は種類ごとに窓口も期限もばらばらなので、許可証を全部出してきて一覧にしてしまうのが早いです。
派遣社員として働いていたころに本店移転を経験しましたが、大変だったのは登記よりも、そのまわりの細かい手配のほうでした。
名刺の刷り直し、社判とゴム印の作り直し、封筒や書式に入っている住所の差し替え、取引先への挨拶状。
どれも登記とは直接関係ないのに、住所が変わるというだけで一斉に発生します。
しかも名刺やゴム印は発注してから届くまでに時間がかかるので、移転日に間に合わないと現場が困ります。
登記の期限を追いかけているうちに後回しになりやすいところなので、移転が決まった時点で「登記」「届出」「社内の物」の3つに分けてリストを作っておくと、あとが楽になります。
登記そのものは自分でやれば登録免許税だけで終わりますが、本店移転はそのあとの届出が本番です。
書類作りで時間を取られるくらいなら、そこはサービスに任せて、期限が短い届出のほうに体力を残しておくという考え方もあります。
まとめ
本店移転の登記と届出について、ポイントをまとめます。
①登記の期限は移転した日から2週間以内(会社法915条)。移転日より前には申請できない
②怠ると100万円以下の過料。払うのは会社ではなく代表取締役など個人
③登録免許税は管轄内なら3万円・管轄外なら合計6万円。管轄外の2通は旧本店の法務局に同時提出
④定款が市区町村までなら同じ市区町村内の移転は株主総会が不要。番地まで書いてあると毎回定款変更になる
⑤必要書類は法務局のひな形PDFに議事録の記載例までひとそろい入っている
⑥印鑑届書は令和7年4月21日から不要。ただし印鑑カードは引き継がれないので再請求が要る
⑦登記後は年金事務所5日・労基署とハローワーク10日が最短。登記事項証明書は多めに取っておく
⑧法人番号公表サイトは自動更新なので届出は不要
本店移転は、法務局の記載例どおりに書けば登記そのものはたどり着けます。
手が回らなくなりやすいのは、そのあとに続く役所まわりのほうです。
移転日が決まった時点で、この記事の表をそのままカレンダーに落としてしまうのが、ひとり総務にはいちばん現実的だと思います。
ぜひ、参考にしてみてください!


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