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社員から「通勤手当って税金かからないんですよね?」と聞かれたんですが、いくらまで非課税だったかパッと出てきませんでした…。しかも調べたら金額が変わっているみたいで、うちの支給額のままで大丈夫か不安です。
私の会社は車通勤の社員が多いので、通勤手当の話といえば、ほとんどがマイカーの話になります。
ところが世の中に出回っている通勤手当の解説は、電車とバスを前提にしたものばかりです。
定期代を実費で払えばいい電車通勤とちがって、マイカー通勤は「距離いくらで払うか」を会社が決めなければいけません。
そして、その金額が税金のかからない範囲におさまっているかどうかも、総務が確認することになります。
しかも、この通勤手当の非課税のルールが、2026年4月から変わりました。
片道65km以上の人の金額が上がったことと、一定の要件を満たす駐車場代を月5,000円まで非課税の枠に加算できるようになったことの2つです。
この記事では、マイカー通勤の通勤手当がいくらまで非課税になるのかを、国税庁の資料の数字そのままで一覧表にまとめました。
新しく制度を作る話ではなく、いま払っている金額を表と照らし合わせるだけの話です。
- マイカー通勤の社員に払う通勤手当がいくらまで非課税か知りたい総務担当者さん
- 2026年の通勤手当の改正で何が変わったのか整理したい方
- 駐車場代を通勤手当として払っていて課税されるのか不安な方
- いま払っている通勤手当が非課税の範囲におさまっているか確かめたい方
通勤手当に税金はかかる?まず押さえる非課税限度額の基本
細かい数字に入る前に、考え方だけ先に整理しておきます。
ここがわかっていると、あとの表がぐっと読みやすくなります。
通勤手当は一定の限度額まで非課税になる
通勤手当は、給与の一部として払うお金です。
ただ、通常の給与に加算して支給する通勤手当は、一定の限度額までは所得税がかからない扱いになっています。
この「ここまでは税金がかからない」という金額のことを、非課税限度額と呼びます。
マイカー通勤の場合、この非課税限度額は片道の通勤距離で決まります。
電車通勤のように「かかった実費がそのまま非課税」ではないところが、いちばんの違いです。
非課税限度額を超えた分は給与として課税される
では、限度額より多く払ったらどうなるのか。
国税庁のページには、こう書かれています。
1か月当たりの非課税となる限度額を超えて通勤手当を支給する場合には、超える部分の金額が給与として課税されます。
この超える部分の金額は、通勤手当を支給した月の給与の額に上乗せして所得税および復興特別所得税の源泉徴収を行います。
つまり、限度額を超えたからといって支給できないわけではありません。
超えた分だけを給与に足して、源泉徴収の計算をやり直すことになります。
会社としてどこまで払うかは会社が決めることで、税務のルールはそのあとの処理の話、と切り分けて考えると混乱しません。
電車・バス通勤との違いは月15万円の上限
ここで、電車・バス通勤との違いも押さえておきます。
電車やバスなどの交通機関だけで通勤している場合、非課税になるのは「最も経済的かつ合理的な経路および方法」で通勤した場合の定期券などの金額です。
そして、その金額が1か月あたり15万円を超える場合は、15万円が非課税限度額になります。
| 通勤の方法 | 非課税限度額の決まり方 |
|---|---|
| 電車・バスなどの交通機関だけ | 最も経済的かつ合理的な経路・方法での定期代など(上限15万円) |
| マイカー・自転車などの交通用具だけ | 片道の通勤距離の区分ごとに決まった金額 |
| 交通機関+マイカーなどの併用 | 定期代など+距離区分の金額の合計(上限15万円) |
大事なのは、マイカー通勤だけの人には15万円という上限の話は出てこないという点です。
マイカー通勤だけの人は、距離の区分で決まった金額が上限になります。
交通機関とマイカーや自転車などを併用する場合は、それぞれの金額を合計して月15万円が上限になります。
「駅まで車で行って、そこから電車」はその代表例です。
マイカー通勤の非課税限度額はいくら?片道距離ごとの一覧表
ここが、この記事のいちばん見てほしいところです。
マイカーや自転車などの交通用具を使って通勤している人の、1か月あたりの非課税限度額です。
下の金額は、国税庁が令和8年4月に公表している改正後の金額です。
| 片道の通勤距離 | 1か月あたりの非課税限度額 |
|---|---|
| 2km未満 | 全額課税 |
| 2km以上10km未満 | 4,200円 |
| 10km以上15km未満 | 7,300円 |
| 15km以上25km未満 | 13,500円 |
| 25km以上35km未満 | 19,700円 |
| 35km以上45km未満 | 25,900円 |
| 45km以上55km未満 | 32,300円 |
| 55km以上65km未満 | 38,700円 |
| 65km以上75km未満 | 45,700円 |
| 75km以上85km未満 | 52,700円 |
| 85km以上95km未満 | 59,600円 |
| 95km以上 | 66,400円 |
この表に、駐車場代を負担している人はさらに上乗せがあります。
そこは次の章でくわしく書きます。
距離の区分ごとに一律で支給している場合の見方
会社側の通勤手当の決め方は、大きく2つに分かれます。
ひとつは「1kmあたり◯円×距離」で毎回計算する方法です。
もうひとつは、距離の区分ごとに金額を決めて、その区分の人には一律で同じ額を支給する方法です。
私の会社は後者で、片道の距離に応じた区分ごとに一律で支給しています。
たとえば「3km未満は3,000円、5km未満は4,000円」といった形です(金額はあくまで一例です)。
この決め方をしている会社は多いと思うのですが、ここで気をつけたいことがあります。
会社の区分と、国税庁の区分は一致しないということです。
会社の区分のほうが細かく刻まれていることが多いので、そのまま比べられません。
確認するときは、会社の区分の人が国税庁の表のどこに入るかを当てはめていきます。
【例】会社の区分が「片道5km未満は4,000円」の場合
①その区分の人の片道距離は2km以上5km未満(2km未満の人を除く)
②国税庁の表では「2km以上10km未満」に入る
③この区分の非課税限度額は4,200円
④支給額4,000円は4,200円の範囲内なので全額が非課税
この形で、会社の区分をひとつずつ照らし合わせていきます。
区分の数は多くても10個くらいだと思うので、一度やってしまえば表がひとつできあがります。
ただ、ひとつだけ落とし穴があります。
いちばん下の区分に、片道2km未満の人が混ざっているケースです。
たとえば「3km未満は3,000円」の区分には、片道1.5kmの人も入ってしまいます。
片道2km未満は全額課税なので、その人だけは3,000円がまるごと課税になります。
区分で一律にしている会社ほど、いちばん下の区分に誰がいるかを見ておきたいところです。
区分で一律にしていると、毎月の計算はとてもラクです。そのかわり、区分を作ったときのまま何年も走り続けることになるので、非課税限度額のほうが変わったときに気づきにくいのが難点だと思っています。
通勤距離の測り方は「通勤経路に沿った長さ」
表を使うときに最初につまずくのが、距離の測り方です。
国税庁のページには、片道の通勤距離について「通勤経路に沿った長さです」と書かれています。
つまり、地図上で自宅と会社を直線で結んだ距離ではありません。
実際に車で走る道のりの長さで見る、ということです。
とくに区分の境目にいる人は、どのルートで測ったかで金額が変わってしまいます。
たとえば片道14.8kmの人と15.2kmの人では、非課税限度額が7,300円と13,500円で倍近く違います。
距離の確認はGoogleマップのルートごと出してもらう
ここは私の会社で実際にやっている方法を書きます。
通勤距離は、社員の自己申告の数字だけだと総務側で確かめようがありません。
そこで私の会社では、入社のときにGoogleマップのルートを一緒に提出してもらっています。
自宅から会社までのルート検索の結果を、距離が表示された状態でそのまま出してもらう形です。
①入社手続きの書類に、通勤経路の申請書を入れておく
②自宅から会社までのGoogleマップのルート検索の結果を添えてもらう
③表示された距離をそのまま申請書の距離欄に書いてもらう
④引っ越したときも、住所変更の依頼と一緒に同じものを出してもらう
なお、Googleマップは国税庁が指定している測定方法というわけではなく、あくまで会社が距離を確認するための一例です。
大事なのは、合理的で一貫した方法で通勤経路と距離を確認して、その根拠を残しておくことです。
Googleマップは複数のルートが出てくることがあるので、どのルートを採用するかも社内で決めておくと迷いません。
ポイントは、④の住所変更とセットにするところです。
引っ越しの連絡は住民税の関係でどのみち総務に来るので、そこに通勤経路の提出をくっつけてしまいます。
通勤手当の変更申請を単独でお願いすると、社員のほうが忘れてしまうからです。
ルートの画面が手元にあると、あとから「この距離の根拠は?」と聞かれたときにも困りません。
距離を数字だけで申告してもらっていた頃は、正直「ほんとにこの距離かな」と思いながら処理していました。ルートごと出してもらうようにしてからは、こちらで確認できるので気持ちがラクになりました。
片道2km未満は全額課税になる
表のいちばん上の行も、見落としやすいところです。
片道2km未満の人に払う通勤手当は、全額が課税になります。
非課税枠がゼロなので、1円でも払えばその全部が給与扱いです。
会社の近くに住んでいる社員にも一律で通勤手当を出している会社は、ここが漏れていないか確認しておきたいところです。
ちなみに、車通勤の社員が多い会社は、台風や大雪のときの出社判断でも電車通勤の会社とは事情が変わってきます。
そちらはこちらの記事にまとめています。

2026年に変わったこと!通勤手当の改正2つ
ここからが、2026年の改正の話です。
令和8年度税制改正で、マイカー通勤の通勤手当について2つの変更がありました。
①通勤距離が片道65km以上の人の非課税限度額が引き上げられた
②一定の要件を満たす駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算できるようになった
①片道65km以上の非課税限度額が引き上げられた
改正前は、片道55km以上はまとめてひとつの区分でした。
片道60kmの人も片道100kmの人も、同じ38,700円が上限だったということです。
これが改正で、65km以上が4つの区分に分かれました。
| 片道の通勤距離 | 改正前 | 改正後(令和8年4月1日以後) |
|---|---|---|
| 55km以上65km未満 | 38,700円 | 38,700円(変わらず) |
| 65km以上75km未満 | 38,700円 | 45,700円 |
| 75km以上85km未満 | 38,700円 | 52,700円 |
| 85km以上95km未満 | 38,700円 | 59,600円 |
| 95km以上 | 38,700円 | 66,400円 |
65km未満の区分の金額は、今回の改正では変わっていません。
ただ、65km未満の金額も、その前の年に一度引き上げられています。
令和7年11月19日に所得税法施行令の改正が公布され、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から金額が上がりました。
たとえば片道45km以上55km未満は28,000円から32,300円に、片道15km以上25km未満は12,900円から13,500円に変わっています。
手元の資料が古いままだと、この2段階の引き上げをまるごと見落とすことになります。
②駐車場代を上限5,000円まで加算できるようになった
実務でいちばん影響が大きいのが、こちらだと思います。
一定の要件を満たす駐車場等を利用して、その料金を負担することを常例とする人は、距離の区分ごとの非課税限度額に1か月あたりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算した金額が非課税限度額になります。
ただし、通勤距離が片道2km未満の人は対象から除かれます。
改正前は駐車場代を非課税の枠に加算するしくみがなかったので、駐車場代を含めた支給額が距離の区分の限度額を超えると、その超えた分が課税されていました。
そこが変わったのが今回の改正です。
社員が駐車場代を負担していない会社は加算の対象にならない
先に、自社に関係のある話かどうかを切り分けておきます。
私の会社は、車通勤の社員には会社の敷地に停めてもらっています。
駐車場代のやりとりがそもそもないので、今回の改正のうち駐車場の部分は関係がありませんでした。
加算が関係してくるのは、次のような会社です。
①社員が自分で月ぎめ駐車場を借りていて、その分を会社が通勤手当に上乗せして払っている
②会社が社員のために月ぎめ駐車場を借りていて、会社が駐車場代を払っている
③駅まで車で行く社員が、駅前の駐車場代やコインパーキング代を自分で払っている
②のように会社が社員に代わって駐車場を契約して料金を払っている場合も対象です。
国税庁のQ&Aでは、この場合も実態として駐車場代相当額の通勤手当を支給しているのと変わらない、という扱いになっています。
会社の敷地に無料で停めてもらっていて、社員も会社も駐車場代を負担していないなら、この項目は確認済みとして先に進めます。
ただし、会社の敷地でも社員から駐車場代を徴収している場合や、会社が別に有料の駐車場を借りている場合は、負担があることになるので個別に確認してください。
ひとつでも当てはまるものがあれば、このあとの要件と計算方法を見ていくことになります。
「一定の要件を満たす駐車場等」とはどこの駐車場か
ここが総務の実務でいちばん迷うところなので、国税庁の書きぶりをそのまま引きます。
「一定の要件を満たす駐車場等」とは、通勤のために使用する交通用具の駐車のための施設のうち、その通勤手当の支払を受ける人の勤務する場所の周辺又はその人が通勤のために利用する交通機関の駅若しくは停留所その他の施設の周辺にあるものをいいます。
言いかえると、対象になるのは次の2つの場所にある駐車場です。
| 駐車場の場所 | 加算の対象 | 具体例 |
|---|---|---|
| 勤務先の周辺 | 対象になる | 会社の近くで社員が個人で借りている月ぎめ駐車場 |
| 通勤で使う駅・停留所などの周辺 | 対象になる | 駅まで車で行って電車に乗り換える人の駅前駐車場 |
| 自宅の周辺 | 対象にならない | 自宅マンションの駐車場や自宅近くの月ぎめ駐車場 |
国税庁のQ&Aでは、自宅付近の駐車場等はこれに該当しないので非課税にはならない、とはっきり書かれています。
また、「その他の施設」については、フェリー乗り場や空港などの交通機関の施設が例として挙げられています。
自転車やバイクの駐輪場も「駐車場等」に含まれます。
通勤のために複数の駐車場を使っていて、どちらも要件を満たすときは、料金の合計額(上限5,000円)で見ます。
なお、「周辺」がどのくらいの範囲までを指すのかについて、具体的な距離の基準は示されていません。
ここは会社ごとの状況で判断が分かれるところなので、微妙なケースは税理士や税務署に確認したほうが安全です。
1か月あたりの駐車場代の出し方
駐車場代は、月ぎめとはかぎりません。
年払いの人もいれば、コインパーキングに毎日入れている人もいます。
国税庁のQ&Aでは、決まり方ごとに「1か月あたりの料金相当額」の出し方が示されています。
| 駐車場代の決まり方 | 1か月あたりの出し方 | Q&Aの例 |
|---|---|---|
| 月単位で決まっている | その料金の額(数か月単位ならその月数で割る) | 3か月24,000円 → 8,000円 |
| 年単位で決まっている | その料金の額を12で割る | 1年79,200円 → 6,600円 |
| 使うたびに払う | 1か月の実際の合計額 | 1か月のコインパーキング代の合計8,000円 → 8,000円 |
| 回数券で払う | 1回分の料金 × 1か月の利用回数 | 11枚綴り1,200円で月20日 → 2,182円(1,200円÷11枚×20日) |
| 上のどれにも当てはまらない | 年間料金相当額を12で割る | 7日で5,880円 → 1か月25,550円(5,880円×365日÷7日=306,600円 これを12で割る) |
料金に消費税が含まれている場合は、消費税込みの金額で見ます。
1円未満の端数は切り上げる例が示されています。
ただし、どの出し方も「合理的な方法で計算していればその額でも差し支えない」という書き方になっています。
細かい計算に悩むより、根拠を説明できる方法で統一しておくほうが実務は回しやすいと思います。
駐車場代を加算した場合の計算例
数字で見たほうが早いので、国税庁のQ&Aに載っている例を借ります。
【前提】片道50km・駐車場代は1か月8,000円
【支給額】距離に応じた通勤手当32,300円+駐車場代8,000円=40,300円
①距離に応じた非課税限度額:32,300円(片道45km以上55km未満)
②1か月あたりの駐車場等の料金相当額:5,000円(8,000円は5,000円を超えるため5,000円)
③非課税限度額:37,300円(32,300円+5,000円)
【結果】支給額40,300円のうち、超過分の3,000円が課税
ポイントは、駐車場代を8,000円払っていても、加算できるのは5,000円までというところです。
もうひとつ、総務が知っておきたいのが会社名義で借りている駐車場の扱いです。
国税庁のQ&Aには、社員が選んだ会社付近の駐車場を会社が社員に代わって契約して駐車場代を負担しているケースが載っています。
この場合も、実態としては駐車場代相当額の通勤手当を支給しているのと変わらないので、通勤手当を支給したものとして非課税限度額の計算をする、という回答になっています。
「うちは会社が契約しているから通勤手当ではない」と思い込んでいると、ここが抜けてしまいます。
会社が借りている駐車場も対象になるんですね。完全に固定費の話だと思っていました…。
改正はいつから適用される?
適用のタイミングも、勘違いしやすいところです。
国税庁のページには、この改正は令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用されると書かれています。
同日より前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するものは、除かれます。
つまり2026年8月の時点では、すでに始まっているルールです。
これから始まる話ではないので、まだ何も手をつけていない会社は、さかのぼって確認する必要があります。
「支払われるべき通勤手当」がいつのものかについても、Q&Aに書かれています。
①契約や慣習などで支給日が定められているもの → その支給日
②支給日が定められていないもの → その支給を受けた日
③給与規程の改訂をさかのぼって実施したことによる新旧の差額 → その支給日(定めがなければ改訂の効力が生じた日)
給与の締め日だけで判断するのではなく、契約や給与規程で定められた支給日を基準に見る、ということになります。
自社の給与規程の書き方によって判断が変わることもあるので、迷ったら顧問の税理士や税務署に確認してください。
通勤手当の改正で総務がやること
ここからは、実際に手を動かす順番で並べます。
上から順にやれば、そのまま実務になるようにしています。
①いまの支給額と非課税限度額を照らし合わせる
最初にやるのは、現状の確認です。
車通勤の社員の一覧を出して、「片道距離」と「いま払っている通勤手当の月額」を横に並べます。
そこに、この記事の一覧表の金額を貼り付けるだけです。
新しく調べ直すものはひとつもなくて、すでに給与計算に入っている数字を並べるだけの作業です。
ここで超過している人が出てきたら、その人だけ次の対応を考えることになります。
②片道65km以上の社員がいないか確認する
次に、今回の改正で直接影響を受ける人を探します。
片道65km以上で通っている社員です。
中小企業だと、そこまで遠くから通う人はそう多くないと思います。
ただ、いる場合は非課税枠が広がったので、これまで課税していた分の一部が非課税になる可能性があります。
該当者がゼロなら、この項目は確認済みとして先に進めます。
③駐車場代を負担している社員を洗い出す
次が、駐車場代です。
洗い出すのは、さきほどの3つのパターンに当てはまる人です。
私の会社のように自社の敷地に停めてもらっている場合は、ここは該当者なしで終わります。
見落としやすいのは、会社が社員のために駐車場を借りているパターンです。
これは経理上「地代家賃」で処理していることが多いので、給与の資料だけ見ていると見つかりません。
経理の担当者にも声をかけて、駐車場の契約が残っていないか確認しておくと安心です。
④駐車場代の金額がわかる書類を集める
該当者が出てきたら、金額の確認です。
国税庁のQ&Aでは、契約書や領収書の提示を受ける法令上の義務はないとされています。
ただ、「1か月あたりの駐車場等の料金相当額」を出す必要があるので、その金額が確認できる書類の提示を受けるなどして確認する必要はある、とも書かれています。
確認は支給のたびに毎月やる必要はありません。
料金の変更があったときに、社員から申し出てもらって確認する形で足ります。
すでに5,000円を超えている人がさらに値上がりしても、限度額の計算に影響しないので、あらためて申し出てもらう必要はないとされています。
この「値上がりしたら申し出てください」の一文を、通勤手当の申請書に足しておくのがおすすめです。
⑤通勤手当の申請書に駐車場の欄を足す
ここまで来たら、次からの運用に落とし込みます。
いま使っている通勤経路の申請書に、欄を足すだけで済みます。
・通勤に使う駐車場の有無
・駐車場の場所(勤務先の周辺/駅などの周辺/自宅の周辺)
・料金と、その決まり方(月ぎめ/年ぎめ/都度払い/回数券)
・料金が変わったときは届け出てもらう旨の一文
「駐車場の場所」を書いてもらうのが、いちばん効きます。
自宅の周辺だと加算の対象にならないので、そこを申請の時点で切り分けられるからです。
⑥引っ越しや異動があったら距離を測り直す
ここからは、日々の運用の話です。
マイカー通勤の通勤手当は距離で決まるので、距離が変われば金額も変わります。
距離が変わるタイミングは、だいたい決まっています。
| タイミング | 確認すること |
|---|---|
| 入社したとき | 通勤経路と距離、駐車場の有無を申請してもらう |
| 引っ越したとき | 新しい住所からの距離を測り直して区分が変わらないか見る |
| 事業所の移転・異動があったとき | 対象者全員の距離を測り直す |
| 通勤方法を変えたとき | 車から電車、電車から車の切り替えを反映する |
| 駐車場を借りた・やめたとき | 加算の対象になるか確認する |
いちばん漏れやすいのが、引っ越しです。
住所変更の届けは出してもらっていても、通勤手当の見直しまで連動していない会社は多いと思います。
住所変更届に「通勤経路も変わりますか」の一行を入れておくと、それだけで拾えるようになります。
入社時の手続きでどこまで集めておくかは、こちらの記事にまとめています。

⑦通勤手当の変更のとりこぼしを防ぐ
ここは、私が実際に失敗しているところです。
通勤手当の変更でつまずくのは、金額の計算ではありません。
変更があったこと自体を、総務が拾えないことです。
私の会社が紙で申請を受けていた頃は、申請書を受け取ったのに給与への反映をうっかり忘れてしまったことがありました。
紙だと、受け取ってから給与計算までのあいだに一度手が離れてしまうんですよね。
そしてもうひとつ、こちらのほうが厄介です。
社員が引っ越したのに、通勤手当の変更申請を出してこないというパターンです。
申請が出てこないと、総務は引っ越したこと自体を知りません。
私の場合、住民税の対応をしているときに「あれ、この人の住所変わってる」と気づいたことがあります。
住民税で気づくということは、引っ越しからだいぶ時間が経っているということです。
これ、うちもあります…。本人は引っ越したことを総務に言えば全部つながっていると思っているんですよね。
対策は2つあります。
ひとつは、さきほど書いた住所変更と通勤経路の提出をセットにする運用です。
社員に「通勤手当の変更申請を出してください」とお願いするのではなく、住所変更の依頼のなかに組み込んでしまいます。
もうひとつが、紙をやめることです。
私の会社では、そのあとSmartHRを入れて紙の申請から切り替えました。
申請の履歴がシステムに残るので、少なくとも「受け取ったのに反映を忘れる」ほうの失敗はしなくなりました。
導入のときに苦労した話は、こちらの記事に書いています。
中小の総務人事の私が実感した3つの効果と注意点-160x90.jpg)
⑧給与計算では課税分と非課税分を分けて登録する
毎月の給与計算では、通勤手当を「非課税の通勤手当」と「課税の通勤手当」に分けて登録します。
給与計算ソフトには、たいていこの2つの項目が最初から用意されています。
ここを分けずに全部を非課税で登録してしまうと、超過分の源泉徴収が漏れます。
逆に全部を課税で登録すると、社員が余計に税金を引かれることになります。
設定の場所や項目名はソフトによって違うので、自社のソフトのヘルプで確認してください。
それから、社会保険のほうの扱いも押さえておきたいところです。
日本年金機構のQ&Aでは、通勤手当は標準報酬月額の対象となる報酬に含まれるとされています。
所得税で非課税になる部分も含めて報酬に入るという点が、税金の扱いと違うところです。
私の会社は顧問社労士と契約しているので、社会保険の届出そのものは社労士にお願いしています。
ただ、社労士に渡す給与のデータを作るのは総務です。
通勤手当の金額を変えたときは、社労士にも一報を入れておくと、算定基礎届や月額変更の相談がスムーズになります。
手続きを社労士が代行していても、全体像を把握しておくのは総務の仕事、という感覚でいるとちょうどいいと思います。
それから、今回のような法改正への対応そのものについてです。
私の会社では、法改正があると顧問社労士から連絡が来ます。
「こういう改正がありました」「この対応が必要です」と教えてもらってから動く、という流れが多いです。
顧問社労士がいる会社なら、この連絡を待つ形でも大きく外すことはないと思います。
ただ、社労士と契約していない会社は、この改正を自分で追いかけるしかありません。
国税庁のサイトを定期的に見にいくか、給与計算ソフトのお知らせをこまめに確認しておくのが現実的だと思います。
社労士さんから連絡が来る体制だと、改正のたびに自分で調べなくて済むので本当に助かります。そのかわり、来た連絡を自社に当てはめる作業はこちらの仕事なので、そこは丸投げにできないところだと思っています。
⑨年末調整と源泉徴収票での扱いを確認する
1年の締めくくりが、年末調整です。
通勤手当のうち非課税になる部分は、源泉徴収票の「支払金額」には含めません。
課税になった超過分は給与に含まれるので、そのまま支払金額に入ります。
毎月の給与計算で課税分と非課税分を分けて登録していれば、ここは自動的に正しくなります。
逆に言うと、途中で登録を間違えていた場合は、気づいた時期に応じて給与計算や源泉徴収税額を訂正して、必要に応じて年末調整で精算することになります。
年末調整の全体の流れは、こちらの記事にまとめています。

マイカー通勤の通勤手当でよくある質問
Q. ガソリン代の実費精算にしている場合はどうなる?
車通勤の会社でいちばん多い質問だと思います。
「距離×燃費×ガソリン単価」で毎月計算して払っている会社は、けっこうあります。
名目がガソリン代でも、通勤のために通常の給与に加算して支給しているのであれば、通勤手当として非課税限度額と比べることになるのが基本の考え方です。
ガソリン代だから全額非課税、ということにはなりません。
ただし、通勤ではなく業務で車を使った分の実費精算は、通勤手当とは別の話になります。
通勤と業務が混ざった払い方をしている場合は判断が分かれるところなので、税理士や税務署に確認したほうが安全です。
Q. 全員に一律で通勤手当を出している場合はどうなる?
「車通勤は全員一律1万円」のような決め方をしている会社も多いです。
一律で出すこと自体は、会社の決め方の問題なので構いません。
ただ、非課税かどうかは社員ごとの片道距離で見るので、同じ1万円でも人によって課税される分が変わります。
| 片道距離 | 非課税限度額 | 一律1万円のうち課税される額 |
|---|---|---|
| 1.5km | 全額課税 | 10,000円 |
| 8km | 4,200円 | 5,800円 |
| 12km | 7,300円 | 2,700円 |
| 20km | 13,500円 | 0円 |
距離に関係なく全員同じ額にすると、計算がラクに見えて、実は社員ごとの課税判定が必要になります。
結局は距離を把握しないといけないので、私の会社のように距離の区分ごとに金額を決めておくほうが、あとの確認はラクになります。
Q. 非課税限度額を超えたらどう処理する?
超えた部分の金額を、その月の給与の額に上乗せして源泉徴収を行います。
通勤手当の支給をやめたり、金額を下げたりする必要はありません。
給与計算ソフトでは、超過分を「課税の通勤手当」の項目に入れて、残りを「非課税の通勤手当」に入れます。
ちなみに、これは所得税とは別の制度の話ですが、通勤手当は最低賃金の計算に含めない賃金のひとつでもあります。
最低賃金のチェックのしかたは、こちらにまとめています。

Q. 自転車通勤やバイク通勤も同じ表でいい?
同じ表を使います。
国税庁の区分では、自動車も自転車も「交通用具」としてまとめられているためです。
駐車場代の加算についても、自転車やバイクの駐輪場が「駐車場等」に含まれるとQ&Aに書かれています。
駅前の駐輪場を借りて電車に乗り換えている社員がいる会社は、ここも確認しておきたいところです。
まとめ
マイカー通勤の通勤手当について、ポイントをまとめます。
①マイカー通勤の非課税限度額は片道の通勤距離で決まる(電車のような実費ではない)
②限度額を超えた分は給与として課税され、その月の給与に上乗せして源泉徴収する
③2026年の改正で片道65km以上の非課税限度額が引き上げられた(最高66,400円)
④駐車場等の料金相当額を上限5,000円まで加算できるようになった。対象は勤務先の周辺か駅などの周辺で、自宅付近の駐車場は対象外
⑤社員も会社も駐車場代を負担していない場合は、駐車場の加算は対象外
⑥適用は令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から(すでに始まっている)
⑦通勤距離は通勤経路に沿った長さ。Googleマップのルートごと提出(確認方法の一例)してもらうと総務側で確認できる
⑧引っ越しの変更申請は出てこないので、住所変更の依頼とセットで受け取る
⑨区分ごとに一律で支給している会社は、いちばん下の区分に片道2km未満の人がいないかを見る(2km未満は全額課税)
⑩判断に迷うケースは国税庁のページで確認するか、税理士や税務署に相談する
通勤手当の改正と聞くと身構えてしまいますが、総務がやることは新しい仕組みを作ることではありません。
いま払っている金額を一覧表と照らし合わせて、駐車場代を払っている人がいないか確認する。
大きくはこの2つだけです。
車通勤の社員が多い会社ほど、ここを整理しておくと後がラクになります。
この記事の金額はすべて国税庁のページから引いていますが、制度は変わることがあります。
実際に処理をするときは、必ず国税庁のページで最新の内容を確認してください。
ぜひ、参考にしてみてください!

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